
今回は相場操縦(そうばそうじゅう)
という用語について解説します。
昨年、
某大手証券会社の相場操縦が発覚して財務省からペナルティを受けました。
あまり聞き慣れない言葉だと思うので、
元証券マンの立場で分かりやすく解説します。
日本取引所グループ(JPX)⇒https://www.jpx.co.jp/regulation/preventing/manipulation/
1.相場操縦とは?

相場操縦の定義は以下の通りです。
市場において、相場を意識的・人為的に変動させ、
JPX
その相場をあたかも自然の需給によって形成されたものであるかのように装い、
他人を誤認させ、その相場の変動を利用して自己の利益を図ろうとするものです。
この定義を整理して言い換えると、
- 金融市場という公平な場所で、
- 意図して価格を上下させたり取引の数を増やしたりすることで、
- 他の投資家に自然に起きたことと勘違いさせて取引を促し、
- その意図して動いた相場で自分だけ儲けを出すこと
金融市場は公平な取引というのが前提です。
投資家の皆さんの売買によって、
買われたら値段が上がり、売られたら値段が下がる。
だから他の投資家がどう動くかを予想しつつ、
自分の売買を決定するのが証券投資です。
しかし、相場操縦で歪められてしまったらどうでしょう?

一気に売られそうだから、
もっと下がるのが怖いし売っておこう。
⇒実際は下がりそうなわけではないのに売ってしまう。

取引量が増えているということは注目度が上がっている。
この株を仕込んでおこう!
⇒実際は取引量が増えているわけではないのに買ってしまう。
という風に勘違いから取引が生まれてしまいます。
その勘違いをわざと引き起こし、
それを利用して儲けを出すという最低の行為が相場操縦なのです。
2.相場操縦の種類

ここでは相場操縦の種類をいくつか紹介します。(金商法159条)
- 仮装売買
- 馴合売買
- 風説の流布
- 見せ玉
それぞれ解説します。
①仮装売買(かそうばいばい)
参考:金商法159条第1項一~三
実際に取引を行う意図がなく、価格や出来高を操作するために売買を繰り返す行為。
金融市場に嘘の需要や供給を示すことで、他の投資家に誤解を与える行為です。
自分で出した売りの注文を、自分自身で買ってしまうことで
取引量がたくさんあるかのように見せかけます。

それは何が悪いんでしょうか?
取引量(出来高)が多いと他の人は「注目度が高い」と思ってしまいます。
例えば、ある料理店の口コミの数が多かったら、
- 人気店なのかな?
- お客さんが多いということは話題になってそう!
- 美味しいんだろうな。
みたいなことを思いますよね?
その口コミの多くを料理店の店主が自分で書いてしまうようなものです。
仮装売買は注目されていると勘違いさせて売買を促す
という悪い行為なのです。
②馴合売買(なれあいばいばい)
参考:金商法159条第1項四~八
複数の者が協力して、あたかも実際の市場取引が行われているかのように見せかける売買行為
仮装売買と同様、
価格の変動を意図的に発生させて他の投資家に誤解を与える行為です。
仮装売買が1人でやる行為なのに対し、
馴合売買は複数人で同じことをやるイメージです。
③風説の流布(ふうせつのるふ)
参考:金商法159条第2項三
虚偽または誇張された情報を意図的に流して、市場価格を操作する行為
インターネットやメディアを利用して、
企業や市場に関する嘘のニュースを広める行為を指します。
拡散力がある個人や法人が相場を動かすような情報を流せば、
それが本当だろうと嘘だろうと投資家が反応して相場は動いてしまいます。
それを利用して、
先に株などを買って仕込んでおいて儲けを出すという行為です。
嘘や誇張だけでも良くない行為なのに、
それを利用して儲けるという最悪な行為なので、許されるはずがありません。
④見せ玉(みせだま)
参考:金商法159条3項
大量の注文を出し、その後取り消すことで、強い需要や供給があるように見せかける行為
2024年に某証券会社が話題になっていたのはこれです。
相場が始まる前に買いの注文が予約でたくさん入っていれば、

何か良い情報が出たのかも。
このチャンスに乗って買おう!
と思ってしまうものです。
そうやって買いの注文をたくさん集めておき、
直前に自分の注文の多くをキャンセルして適度に買いの注文を出せば、
価格の上昇に簡単に乗れるということです。
こんなことして良いわけありませんよね。
3.まとめ

今回は相場操縦についての解説でした。
- 仮装売買
- 馴合売買
- 風説の流布
- 見せ玉
を例として紹介しましたが、金融市場で絶対にやってはいけない行為の1つです。
他にも記事を書いているので、時間があればこちらも読んでみてください。